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個人事業主のための特定電子メール法ガイド

目次

特定電子メール法とは?その目的と背景

特定電子メール法(正式名称:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)は、いわゆる迷惑メールを規制するために2002年に施行された法律です。

インターネットや携帯メールの普及に伴い、一方的に広告宣伝メールを大量送信する迷惑メールが社会問題となったことを受け、良好な通信環境を守る目的で制定されました。

この法律により、事業者(営利目的の法人や個人事業主)が営業や宣伝のために送るメールについて、守るべきルールが厳格に定められています。

2008年の改正では規制が強化され、後述するオプトイン方式(事前同意のある相手にのみ送信可)の導入や罰則の強化が行われました 。

つまり現在では、「あらかじめ同意を得た人以外へ広告メールを送ってはいけない」というのが大原則になっています。

加えて、メールに一定の情報を表示する義務や、受信拒否(オプトアウト)した相手へ再び送ることの禁止、送信者情報の偽装禁止なども定められています。

要するに、特定電子メール法は「受信者の許可なく迷惑な宣伝メールを送らない」「送るならきちんと名乗って連絡手段や停止方法を示す」ことを事業者に求める法律です。

個人事業主であっても営業目的のメールを送る際にはこの法律の対象になります。自分は小規模だから関係ない…ではなく、たとえ小さなお店のメルマガでも法律を守って配信する必要があります。

オプトイン(事前同意)のルール

オプトインとは、メールを送る前に受信者から事前に同意をもらうことです。

特定電子メール法では原則として、このオプトイン(事前承諾)のない広告・宣伝メールの送信は禁止されています 。つまり、「同意を得ていない相手に勝手に営業メールを送ってはいけない」ということです。

具体的には、メールマガジンを配信する場合、購読希望者に事前に配信同意の意思表示をしてもらう必要があります。例えば、ウェブサイトの会員登録フォームで「メルマガを受け取る」にチェックを入れてもらう、イベントで名刺をいただく際に「後日メールでご案内を送ってもよいですか?」と確認する、といった方法です。

口頭や書面でも構いませんが、いつ・どのように同意を得たか記録を残しておく義務もあります。後述するように、万一トラブルになった場合に備えて、同意取得の日時や方法がわかる記録(ログや書面)を保存しておきましょう。

なお、法律上はいくつかオプトイン不要の例外も定められています。たとえば「自分と取引関係にある人へのメール」や「名刺交換などで本人からメールアドレスを教えてもらった相手へのメール」などは、事前同意がなくても送信が認められる場合があります。

しかしこれらも相手が望めばメールを受け取れるという状況に限った例外です。ビジネス上の関係があるとはいえ、いきなり宣伝メールを送りつければ信頼を損ねかねません。個人事業主の皆さんは、例外に頼らず原則どおり明確なオプトインを取ることを強くお勧めします。お客様から「聞いてないのに宣伝メールが来た」と思われないようにすることが大切です。

送信者情報の表示義務(誰が送ったか明示しよう)

広告や宣伝を目的とするメールを送る際は、メール本文に送信者の情報をきちんと表示する義務があります。

受信者が「このメールは誰から来て、どう対応できるのか」を容易に判断できるようにするためです 。

特定電子メール法および関連ガイドラインでは、少なくとも次の事項を表示するよう求めています

  • 送信者の氏名または名称(メール送信者としての正式な名前)
  • 受信拒否(オプトアウト)ができる旨の通知(配信停止の案内)
  • 送信者の住所(所在地)
  • 苦情や問い合わせ先(メールアドレスや電話番号など連絡先)

これらの情報のうち、「氏名または名称」と「受信拒否ができる旨(配信停止案内)」はメール本文中に必ず記載してください。

住所や問い合わせ先については、本文に直接書く代わりにリンク先のページで表示する方法も認められていますが、その場合でもメール中に「住所・連絡先はこちらでご覧いただけます」等、受信者が容易にアクセスできる案内を入れる必要があります。メールの一番上か最後にまとめて記載すると、受信者にとって親切でしょう。

屋号でもいいの?個人事業主の氏名表示ルール

個人事業主の方が迷いやすいのが「名前の表示」です。結論から言うと、屋号(ビジネスの名前)だけの記載では不十分です。送信者名は正式な氏名または法人名を示す必要があります。

法人であれば登記上の会社名、個人事業主であればご自身の氏名(本名)を記載するのが原則です。「○○ショップ運営事務局」「△△(サービス名)スタッフ」などウェブサイト名やサービス名、ブランド名だけでは送信者を明示したことになりません

例えば、屋号が「山田商店」で代表者が山田太郎さんの場合、メール末尾の発行者表記は「山田商店(代表:山田太郎)」のように本名が分かる形にすると安心です。少なくとも「山田商店」だけでは誰が責任者なのか不明確なので避けてください。「名前を出すのはちょっと…」という気持ちもあるかもしれませんが、法律上必要な表示ですのできちんと明記しましょう。

配信停止(オプトアウト)の方法を明示

メールを受け取った人が配信停止(オプトアウト)を希望する場合の手続きを、はっきりと案内することも義務の一つです。メール本文に「※配信停止をご希望の方は、こちらのリンクから手続きをお願いします。」といった文言を入れるとよいでしょう。

リンク先でワンクリックで解除できるフォームを用意したり、返信用の専用メールアドレス(例:「unsubscribe@○○.com」)を用意して「このアドレスに空メールを送信してください」と案内したりする方法があります 。形式は自由ですが、「どうすれば配信を止められるか」が誰にでも分かるようにはっきり記載してください。

実務上は、なるべく簡単に配信停止できる方法を用意するのがポイントです。手続きが煩雑だと、受信者はわざわざ解除せずにメールを無視したり、迷惑メールフィルタにかけてしまう可能性があります。例えばワンクリックで解除できるURLを用意する、複数のメルマガをまとめて一度に解除できる設定にする、など受信者の手間を減らす工夫が推奨されています。

そして、実際に配信停止の依頼があったら速やかにメール送信を停止することも忘れずに。法律上、受信拒否を通知してきた相手にその後メールを送り続けることは禁止されています 。

自動解除システムを使ってもよいですし、手動管理の場合もリストから確実に外しましょう。「解除したのにまだ届く」という事態は信頼を大きく損ねるので注意してください。

違反したらどうなる?罰則とペナルティ

「もしうっかり違反メールを送ってしまったら、逮捕されたりするの?」と不安になる方もいるかもしれません。特定電子メール法に違反した場合、まず総務省や消費者庁からの行政指導(是正指示や改善命令)が行われるのが通常です。

たとえば「同意を得ていないメール送信をやめなさい」「表示義務を守りなさい」といった措置命令が出され、是正を求められます。個人事業主の場合でも、迷惑メール苦情が積み重なれば当局から注意喚起や指導が入る可能性があります。実際、迷惑メール相談センター(日本データ通信協会)では違反が疑われるメールの情報提供を受け付けており、悪質な事例は主管官庁に通報されています。

命令に従わず悪質な違反を続けた場合には、いよいよ罰則が科せられる可能性があります。特定電子メール法には刑事罰の規定もあり、違反が重大と判断されれば「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される可能性があります(法人が違反した場合は行為者個人の処罰に加え、法人に最大3,000万円の罰金)。例えば、送信者情報を偽装してスパムを送ったり、行政からの停止命令を無視して配信し続けたりすると、このような厳しい処罰の対象となり得ます 。

もっとも、通常の営業メール配信者が即逮捕…というケースは稀で、まずは是正指導→それでも悪質なら罰金、といった段階を踏むと考えられます。

ただし、「知らなかった」で済むものではありませんし、悪質業者と見なされれば社会的信用も失います。法律を守って健全にメルマガ配信を行うことが何より大切です。万一、自分の送ったメールが問題視され総務省から連絡が来た、という場合は速やかに専門家に相談しましょう。

実務で気をつけるポイントまとめ

最後に、個人事業主の皆さんがメルマガ配信の実務で押さえておきたいポイントをまとめます。

  1. 必ずオプトインを取得する: 送っていい相手だけに送るのが鉄則です。同意を取っていないアドレスには送らないようリストを管理しましょう。過去に取引があるお客様でも、できれば改めて「メール配信OK」の意思表示をもらってください。
     
  2. 同意の証拠を残す: 誰にいつ同意をもらったか後で確認できるようにしておきます。例えば、ウェブ登録なら日時とIPアドレスを記録、メールで承諾を得たならそのやり取りを保存、名刺の場合はもらった日付や場面をメモするなどです。同意記録は少なくとも最後にメールを送った日から1か月以上は保管する義務があります(法律違反で行政処分を受けた場合は1年間保存)。
     
  3. メールのフッターに必要事項を明記: 送信者名(個人事業主は本名)、住所、問い合わせ先を忘れず記載しましょう。「○○(あなたの名前)|○○商店 住所:△△市… メール:info@○○」といった形で入れておくとよいです。さらに「配信停止はこちら:URL or メールアドレス」を明示し、受信者がいつでも解除できるようにしておきます。
     
  4. 配信停止リクエストには迅速に対応: 解除の依頼メールが来たら速やかに該当アドレスへの配信を止めましょう。手動管理の場合、解除漏れがないよう注意が必要です。メール配信システムを利用している場合は、解除リンクの動作テストも忘れずに行ってください。受信拒否した人に再送信すると違法になります。
     
  5. 送信リストの適正管理: 宛先メールアドレスが間違っていないか、存在しないアドレスに送り続けていないかチェックしましょう(存在しないアドレスへの大量送信も法律で禁止されています。また、取得元不明なアドレス(どこで同意を得たか不明なリスト)は使わないようにします。
     
  6. 最新の情報に注意: 法律自体の大きな改正はここ数年ありませんが、総務省や消費者庁からガイドラインの改定や注意喚起が随時行われています。例えばSMS(ショートメッセージ)による広告メールも特定電子メール法の規制対象であることをご存知でしょうか? SMSを使った広告配信でも基本はメールと同じようにオプトインと表示義務が必要です。また、海外から日本宛てに送られてくる広告メールであっても法律の適用対象になります。日々巧妙化する迷惑行為に対応するため、行政も監視を強めていますので、最新動向にアンテナを張っておくと安心です。総務省や消費者庁の公式サイトでは本法律に関する資料やQ&Aが公開されていますので、定期的に確認してみましょう。

まとめ

特定電子メール法は、一言で言えば「お客様に無断で勝手に宣伝メールを送りつけないで、メールを送るならちゃんと名乗って連絡手段とやめ方も示しましょう」という、当たり前だけど大事なルールです。個人事業主にとっては少しハードルが高いように感じるかもしれませんが、適切に守ればお客様からの信頼にもつながります。実際、「ちゃんと許可を取って丁寧に配信しているメール」は読者にも好印象を持ってもらえるものです。

ぜひ本記事のガイドを参考に、法律を遵守した安心・安全なメルマガ配信を心がけてください。最初は戸惑うかもしれませんが、一度仕組みを整えてしまえば難しいことはありません。お互いに気持ちの良いコミュニケーションを続けるために、ルールを守った運用をしていきましょう。あなたのビジネスのファンを増やす健全なメール配信を応援しています!

参考資料:総務省「特定電子メールの送信適正化等に関する法律」など

●特定電子メールの送信の適正化等に関する法律

●特定電子メールの送信等 に関するガイドライン (総務省)

●特定電子メールの送信の適正化等に関する 法律のポイント

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